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痛みを通しての学び ~膝の人工関節置換手術を受ける~

2025年2月19日

誰でも痛いのはイヤだ。
体の痛みは好ましいものではないけれど、何十年も生きてきてどこも痛いところがないという理想的な状態はあまりないものなのかもしれない。痛みは忌み嫌うべきものなのか、それともそこから何かを学ぶことができるのか、、。
近況報告として、、

入院した病院から見る日の出

2025年の2月はほぼ休み。ワークショップトレーニングも予定がないし、オンラインレッスン個人レッスンもほぼ休み。周囲の数人にしか理由を話さないでの長期休養の最中だ。これは予定された休みではあったがそれと同時に、予想できなかったような「痛み」との対峙と戦いの時間でもあった。

コロナ以来の膝の痛み

あれはコロナが始まり、オンラインレッスンを開始してからしばらく経った頃だから、2021年ぐらいだろうか。断続的に左膝の激しい痛みを感じるようになった。痛くて歩くのも大変な時もあれば、問題なく普通に動ける時もある、というような感じ、、。最初は背骨から来ている痛みではないかと思ったのだが、画像診断により変形性膝関節症(軟骨が薄くなり、関節面同士が触れるようになる)だと分かった。

当初はヒアルロン酸+抗炎症剤の注射で劇的に良くなった時期もあったが、次第に動きに制限が出て、仕事にも差し支えるようになってきた。

フェルデンクライスで対応

すり減った膝の軟骨は回復しないとは言われたものの、フェルデンクライスを使えば、動きによって痛みと不調はなんとかできるのではないだろうか?と考えて試行錯誤した。そのアプローチはそこそこの成功を収め、痛みをあまり感じない状態を維持することができるようになった。階段の昇り降りや、日常動作はほぼ問題なし。体重移動と体幹部の使い方、膝への負荷が減るようにと背骨と胸郭の動きを探索し続けて、かなり良くなった。

ただ、どうしてもできないのは、早く歩くこと、長く歩くこと、床に素早く腰を下ろすこと、走ることももちろんダメ。

仕事への影響も大きかったし、距離を歩けないことから行動半径が狭くなる。ゆっくり動けば問題ないところまでは改善できても、そこから先は非常に難しいと分かった。

決断したら実行あるのみ

そこで行動に制限がないようにしたいという考えから、思い切って膝の人工関節置換手術を受ける決断をした。聞くところによれば手術後に運動能力を飛躍的に取り戻した例もあるようだし、術後のリハについての好奇心を感じ、結果への期待が膨らんできた。

通院していたクリニックから紹介された病院では経験豊富な医師による最新の技術を使った手術が受けられるとのことで昨年11月に手術の予約をした。仕事を休める2月の手術を決め、入院期間を聞くと「3週間」(!)だそうだ。パパッとやってさっさと動き回りたい私は、キッパリ「1週間で退院希望です」と伝えると、「あり得ない」「それは無理」。むむむ。

病室から見る月

1月いっぱい仕事を頑張り、手術日の前日に入院。病室で渡された計画書には、「入院期間4週間」と書いてある!むむむむ。これはもう頑張るしかないかなと腹を括り、手術と術後の回復に集中することにした。

関節曲げ伸ばし+痛みはリハで必須!

術後3日間ほどはもの凄い痛みを感じ続け、ベッド上の左脚はほとんど動かず、腫れ上がり痛みを生み出す異物となった。

しかし、翌日からリハ開始だ。ちょっとずつ膝を曲げたり脚を内旋させたり(何をやっても激痛!)、術後の膝の曲げ伸ばしはやらないと癒着してしまうそうだ。厳しい人生が始まった。「痛みを通しての探索」は新しい。頑張れ、私!

新しい膝を信じること

2日目には歩行器を使っての歩行訓練が始まった。手術した脚に体重をちゃんと載せるようにと言われる。そこで思い切って体重を載せ、お!なるほど立てるんだなと思った途端、バランスが良くなり立つ感覚を取り戻す。立って歩くのは大丈夫だと思えた。しかし脚全体が腫れていて痛いのは変わらず、、。

3日目はリハなしだったので、廊下で自主トレに励み、かなりスムーズな歩行が可能に。真っ直ぐに立っているのが脚にとって一番楽だと分かる。足裏もしっかり床につく。休みながら歩くのが楽しくなった。

4日目には杖を使って歩く。これは、問題なくできるのが分かり、嬉しかった。どこでも自由に行ける気分だ。退院できる!担当PTも絶賛(!)。ここぞと早期退院を訴える。でも、それを判断するのは彼ではないのだ。ついに主治医に早期退院を相談すると、「だめ、無理、ちゃんとリハしないと自分のためにならいない」(患者思いの良い先生だ)。「膝曲げ120度、階段昇降、自転車こぎができないとだめ」。(ということはその条件クリアすれば良い!)

退院日の朝、膝は腫れている

そして、6日目に全部条件をクリアして(この日は主治医が休み)、7日目に主治医の了承を得て、8日目に無事に退院となりました。バンザイ!

伝説の患者と言われ

前例のない手術後1週間での退院には、超速のちょっと過激なプランを実践してくれたリハ担当のPTのサポートも大きかったのだが、彼曰く、「あなたは伝説の患者です」。

まだまだシャバに戻って動き回るのは難しいけど、自分の家ならなんとか大丈夫。病院はずっといる所じゃない。

学びのための新しいツール

人工関節置換術を受けた後、不調が生じる可能性があると退院時に警告された。それは理解できる。私の膝もそうだが、元々の原因だった体の使い方の癖が修正されていないままで関節を新しくしても、問題解決にはならないことがあるのだろう。人工関節を入れた膝は真新しい素敵な学びのためのツール!これを活かし切るためにフェルデンクライスを使って行こうと思う。

松本裕子さんと杖を持つ私

この日(2月14日)が私としては退院のデッドラインだったのは、ピアニストでフェルデンクライスプラクティショナーでもある松本裕子さんのコンサートがあるだった。タクシーで会場に駆けつけ、彼女の晴れ姿を見て素晴らしい演奏を聴き、一緒に行ったプラクティショナーの友達と夕食を食べて車で送ってもらう。色んな意味でドキドキしながらも本当にハッピーだった。

だから、伝説級の頑張りのモチベーションをくださった松本さんには本当に感謝。

ということで、仕事はぼちぼち始めていきます。

2025年2月19日   かさみ康子