この2日間のワークショップの狙いは、フェルデンクライスのATMレッスンがどれだけ深い思慮と知識、洞察を背景にして作られているかを、体験を通して理解してもらうことでした。ATMレッスンを、モシェ・フェルデンクライスの教えた内容に沿って提供し、それを追求しながら集中した時間を過ごしてもらいたいということを考えました。
「パフォーマーのためのフェルデンクライスワークショップ」というタイトルは、2つの意味があり、一つは文字通り、音楽家や演奏家、アスリートの皆さんに興味を持っていただきたいということ、もう一つは、人間は誰でも皆、パフォーマーだということでした。この世界の中で自分自身として動き回ることは、行動の全てはある意味でパフォーマンスと考えられるかと、、、。
このワークショップでは、「中心線」の体験的理解がどのように大切なものであるか、に焦点を当てました。モシェが執拗に繰り返したmiddle lineのイメージを追求する2日間です。これほど集中的にATMそのものを体験するための時間は、トレーニングを除いてはなかなか無いことだと思います。参加者の皆さんも充実した体験を楽しんでくださったようです。
1日目の前半は、Esalen#7 Spine Chain の体験を満足なものにするためのプロセス。5本のラインと中心線に重点を置いたスキャン、屈曲のレッスン、シーソーの呼吸。ここまでが準備で、その後 “Spine Chain” を行いました。モシェのレッスンは基本的と言われるものであっても、どれも簡単ではありません。それを簡単であるかのように見せるのではなく、チャレンジするプロセスを詳細化するという狙いでした。胸部をどのように使えば良いか等、少しは分かりやすくなったかな?
午後は、体験についてのディスカッションを経て、主に、 “Plane Dividing Body, part1” (AY112)を行いました。その前段階のスキャンとしては、中心線からの各部分の距離を感じるものを。参照したのはEsalen#30でした。体を中心から二つに分ける透明な面をイメージしてのレッスンは大変面白い体験だったようです。
2日目は、中心のラインをベースにして、そこからの展開を試みることに。空間意識(パフォーマーだし!)、方位性の変化、円形のイメージ、立位でのレファランスムーヴメント。そして、ATMレッスンとしては、うつ伏せで行う中心線のレッスンとして、Esalen#9 Tilting Legs とHeels and Toes in Circles (AY244) を前半に、そして後半は Esalen#10 Wringing とEsalen#22 Left Shoulder です。
軸としての中心線の意識がしっかりできたところで、回旋やヒネリの動き、側屈のコンビネーションを体験し、最後には左右が非対称な(片側しか行わない!)「左の肩」です!熱心に体験している参加者の脳はたくさん刺激されて興奮状態かな!少なくとも眠くなったりしません(笑!)
終わって立ち上がり、片方ずつ腕を上げてみるという動きを行なった際に、参加者の一人(四十肩でずっと苦しんでいた方)が、あまりの変化の大きさに「あ!右の腕が!!」と叫びました。動きを取り戻したことを知った瞬間でした。思いを共有できた参加者全員にとって素晴らしいお土産になりました。
また、やりましょうね!
<参加者のコメントから>
2日間じっくりと体の中心などを感じられ、変化する様子がわかり楽しかったです。左肩の動きなのに右肩のROMが変化したのが嬉しかったです。(CNさん:主婦)
多方面からの探索で色々発見することができました。自分の動きの繋がっていない部分が明確になりました。胸郭の動きは重要だなと感じることができた2日間でした。(YKさん:看護師)
2日間に渡っての参加でしたが、長い時間自分の動き、感覚に注意を向け、差異を探すことは素晴らしい体験だと思います。日常的な動きとしての「私」という見方もできてとても興味深いものでした。目的を仮にも作ってワークショップに参加する方が気づきの方向もできて良いのではと思いました。(よしさん:会社員)
帰り道、歩道橋を2段登りがなんとなくできる程、体が楽に動けて驚きました。フェルデンクライスは面白いです。原因と結果という考え方ではない、もっと複雑なのだと捉える、考え方の一つの選択肢を増やすことで無限の拡がりがあると思いました。楽しい!(AMさん:マッサージ師)